はじめに|「たった一言」が、いちばん難しかった
「だっこして」って、英語でなんて言うんだろう?
日本語の絵本『あのね、きょうね、』を英語に翻訳する中で、
私はこの短い一言の前で、何度も立ち止まりました。
単語だけ見れば簡単です。
でもそれは、「意味が通じるか」ではなく、
“感情がちゃんと届くか” という問いでした。
この記事では、
日本語の絵本を英語絵本にする過程で実際に行った、
-
タイトル・セリフ・ト書きの試行錯誤
-
子どもらしい話し方と、親の言い方の違い
-
EQ(感情理解)の視点での英語表現の選び方
-
AI(ChatGPT)とのリアルな使い方
を、これから翻訳や創作に挑戦する方の役に立つ形でまとめています。
1. 翻訳は「正しさ」より「子どもらしさ」
まず、問題になったのがこのセリフです。
🐻
「だっこして!」
AIが最初に出してきた英語は、
“Can you hold me, please?”
文法的にも丁寧さとしても、間違いではありません。
でも、読み聞かせを想像して声に出した瞬間、違和感がありました。
-
丁寧すぎる
-
大人っぽい
-
子どもの“甘え”の温度がない
そこで選び直したのが、
“Can I have a hug?”
これは、アメリカの子どもたちが日常的に使う表現です。
ポイント
英語絵本では、
「正しい英語」より「実際に使われている英語」
を選ぶ必要があります。
2. 英語絵本は「読む」より「声に出す」もの
翻訳中、私が何度もやったことがあります。
それは、
声に出して読むこと。
-
息継ぎしやすいか
-
親が自然に言えるか
-
子どもが聞いて安心する音か
英語絵本は、
テキストではなく 音声メディア に近い存在です。
だから、
-
文法的に完璧か
-
文章として美しいか
よりも、
-
口に出したときのリズム
-
一文の短さ
-
繰り返したくなる響き
を優先しました。
3. ト書きは「説明」しないほうが伝わる
翻訳で意識的に減らしたのが、
感情を説明する文章です。
たとえば──
❌
He was sad because he failed.
⭕
…
“Can I have a hug?”
感情を言葉で説明すると、
子どもの解釈の余地がなくなります。
絵本で大切にしたこと
-
感情は「行動」と「セリフ」で伝える
-
親の言葉で“答え”を出しすぎない
これは、
SEL(Social Emotional Learning)の考え方とも一致します。
4. 動物ごとに変えた「感情のニュアンス」
この絵本には、12組の親子動物が登場します。
同じ「びっくり」「こわい」でも、
動物によって言葉の響きを変えました。
| 動物 | 感情 | 工夫した英語表現 |
|---|---|---|
| 🐱 ネコ | ごめん… | “I went scratch, scratch—oops! I’m sorry, meow.” |
| 🐻 クマ | こわい | “I heard a big, loud sound…” → “Can I have a hug?” |
| 🐧 ペンギン | びっくり | “Zoom—then plop!” → “That must’ve surprised you!” |
ポイントは、
説明しすぎず、音や間で伝えること。
5. 親の一言で、感情は「閉じる」こともある
翻訳で最も慎重になったのが、
親のセリフでした。
日本語では自然でも、
英語にすると「断定」に聞こえる表現があります。
比較してみると…
| 日本語 | 直訳しがちな英語 | 実際に使った英語 |
|---|---|---|
| びっくりしたね | You were surprised. | That must’ve surprised you. |
| こわかったね | You were scared. | That was scary, wasn’t it? |
違いは、
決めつけないこと。
-
you were ~(断定)
-
that must’ve ~ / wasn’t it?(寄り添い)
この差は、
EQの高い英語かどうかを分けます。
6. AIは「翻訳者」ではなく「相棒」
よく聞かれます。
「英語が得意じゃなくても、AIで絵本翻訳できますか?」
答えは、YES です。
ただし、使い方が重要です。
私がやった流れは、次の通り。
-
ChatGPTに下訳を出してもらう(読み聞かせ調)
-
「子どもっぽい?」「冷たくない?」と自分の感覚でチェック
-
違和感をそのままAIに伝えて再調整
-
声に出して最終確認
大切なのは
「自分の違和感」を信じること。
英語が完璧じゃなくても、
「ちょっと冷たい気がする」という感覚は、翻訳の出発点になります。
7. 英語版をKDPで出版してわかったこと
完成した英語版絵本
『You Know What? Today…』は、
KDPを通じてAmazon.comで公開しました。
結果、
Kindle洋書・Parenting 無料部門 第1位 を獲得。
英語圏では、
-
感情を言葉にする
-
親子の対話を大切にする
というテーマは、
SEL絵本として明確な需要があります。
8. 翻訳は、もうひとつの「創作」
私は、翻訳を
再構築=もう一度つくること
だと考えています。
-
この感情は、どんな音で届くか
-
読み聞かせで、子どもは安心するか
-
親は、自分の言葉として言えるか
そんな問いを重ねながら、
日本語の温かさを、英語のリズムに乗せました。
おわりに|ことばは、心を運ぶ
英語が得意な人も、苦手な人も、
AIをパートナーにすれば、絵本の世界は広がります。
でも一番大切なのは、
ことばは、意味ではなく、心を運ぶもの
翻訳とは、
あなたの物語を、
別の言語でもう一度語ること。
この記録が、
誰かの挑戦の背中をそっと押せたら嬉しいです。
🎉 おかげさまで、Amazonランキング1位に!
英語版絵本『You Know What? Today…』が、
Amazon.comのKindle洋書「Parenting 無料部門」で第1位を獲得しました!
「感情をことばにする力」をテーマに、
AIと一緒に翻訳しながら、ひとつひとつのセリフを丁寧に選びました。
読んでくださった皆さまのおかげです。
制作の裏側や翻訳の工夫について、本記事にまとめていますので、
これから挑戦する方の参考になれば嬉しいです。
※画像はAmazon.comランキングページ(Parenting › Top 100 Free)のスクリーンショットです(2025年7月時点)

※画像は、2025年7月におけるAmazon.com内の「Kindle洋書 > Parenting」無料部門ランキングのスクリーンショットです。
著者自身の書籍に関する記録として掲載しております。
※出典|Source: Amazon.com “Kindle eBooks > Parenting” Top 100 Free Ranking (as of July 2025).
The image shows a screenshot of the author’s own publication ranking.
✔ 関連リンク|この翻訳の試行錯誤から生まれた絵本たち
📕 日本語原作
絵本『あのね きょうね』
(日本語版|Amazon.co.jp)
📘 英語版
絵本『You Know What? Today…』
(英語版|Amazon.co.jp)
🌏 NEW|翻訳の集大成
📗 日英併記バイリンガル版
『You Know What? Today… / あのね きょうね』
(日本語と英語を1冊で楽しめる読み聞かせ絵本)
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